この記事では、グリースペンシルを使って、3D ViewウィンドウやUV/Image Editorウィンドウに落書きする方法について説明します。 グリースペンシルとは油脂が含まれるペンのことで、いわゆる色鉛筆やクレヨンのようなものらしいです。
グリースペンシルが役立つ場面は主に2つです。 1つ目は、3D ViewウィンドウやUV/Image Editorウィンドウにメモを残すことです。 『メッシュのこの部分の形状がおかしい』とか『アニメーションの動きは、この関節をもっと曲げよう』というようなことを、自分が忘れないように記録したり、チームの他のメンバに伝える場合などに使用します。
2つ目は、手書き風のアニメーションの制作です。 グリースペンシルで描いた線は、メッシュオブジェクトに変換することでレンダリング結果に含めることができます。 それを動かせば、アニメーションさせることができるのです。
グリースペンシルで描き込んだ線は、レンダリング結果には描かれません。 あくまでも『落書き』であり、メッシュオブジェクトではないのです。
ただし、メッシュオブジェクトに変換すれば、レンダリングされるようになります。
グリースペンシルの描画は、選択中のオブジェクトと結びつけられます。 例えば、カメラを選択中に落書きすると、その落書きはカメラに結びつけられます。 その場合、カメラが選択されている時にだけグリースペンシルでの落書きが表示され、カメラが選択されていない場合には表示されなくなります。
なお、オブジェクトを選択せずに落書きしたものはシーンに結びつけられ、オブジェクトが未選択の場合に表示されるようになります。
グリースペンシルでの描画は、レイヤごとに分けることができます。 最初のレイヤには、モデリングの注意点をメモし、2番目のレイヤにはアニメーションに関するメモを残すというような使い方ができます。
なお、グリースペンシルのレイヤはオブジェクトを配置するレイヤとは関係ありません。 また、レンダーレイヤとも関係はありません。
ちなみに、レイヤはシーンやオブジェクトごとにそれぞれ分かれています。 シーンのレイヤはオブジェクトA・オブジェクトBのレイヤとは関係ありませんし、オブジェクトAのレイヤとオブジェクトBのレイヤも関係はありません。
グリースペンシルで描いた線は、消すことしかできません。 『ちょっと、右に移動させよう』とか『この部分の曲がりを強くしよう』というような調整はできません。
グリースペンシルで描いた線は、フレーム間での補完は行われません。 1フレーム目に四角を描き、10フレーム目に円を描いた場合、2フレーム目から9フレーム目には1フレーム目と同じ四角が表示されます。
四角からゆっくりと円に変化することはありません。
グリースペンシルは、レイヤごとに筆先の色を設定します。 つまり、同じレイヤに異なる色で描き込むことはできません。
では、グリースペンシルを使ってみましょう。 新規ファイルを開いた状態から説明を進めますので、画面上部のプルダウンメニューの"File" -> "New"を実行して新規ファイルを開いてください。
次に、プロパティシェルフを開きます。 キーボードのNを押します。
上図のようにプロパティシェルフが開きます。
続いて、グリースペンシルを有効にします。
上図のようにGrease Pencilパネルの同名のチェックボックスをオンにします。
では、線を引いてみましょう。 まずは、自由曲線、つまり、マウスを動かした通りに線を引きます。
上図のようにキーボードのDを押しながら、マウスの左ボタン()でドラッグします。
上図のようにドラッグした位置に線が引かれます。
また、Grease Pencilパネルにレイヤが追加されています。 レイヤが存在しない状態で線を引くと、自動的にレイヤが追加されます。
では、試しにレンダリングしてみましょう。 キーボードのF12キーを押します。
上図のようにグリースペンシルで描いた線は、レンダリング結果には現れません。
レンダリング結果には現れないことが確認できましたので、次の説明に進みます。 ではここで、先ほど引いた線を消しましょう。
上図のようにキーボードのDを押しながら、マウスの右ボタン()でドラッグします。
上図のようにドラッグした範囲の線が消されます。 このように、キーボードのDを押しながらマウスの右ボタン()でドラッグすることで、線を消すことができます。
続いて、直線を引いてみましょう。 単発の直線も連続の直線も引けますが、まずは、単発の直線を引きます。
上図のようにキーボードのCTRL+Dを押しながら、マウスの左ボタン()でドラッグします。
上図のようにドラッグ開始点から終了点に直線が引かれます。
続いては、連続する直線を引きましょう。 クリック点を結ぶように線を引くことができます。
上図のようにキーボードのCTRL+Dを押しながら、マウスの右ボタン()でクリックします。 最後の点をクリックし終えたら、キーボードのEnterキーまたはEscキーを押します。
上図のようにクリックした点をつなぐように直線が描かれます。
ではここで、奥行きについて説明したいと思います。 つまり、今ここで引いた線が、始点からどのぐらいの距離に描かれているのかということです。
それを確かめるため、3D Viewウィンドウの視点を90度ほど回り込ませましょう。
上図のように視点を移動します。 グリースペンシルで線が描かれた平面を、ほぼ横から見ている状態といえばいいでしょうか。
見ての通り、3Dカーソルの位置に描かれているのがわかります。 これは、3Dカーソルの位置に描画する設定になっているためです。
上図のようにGrease PencilパネルのDrawing SettingsのDraw Modeが "Cursor" になっています。 この設定では、3Dカーソルの位置に、視点から見て垂直な面があるかのように線が描画されます。
では、次の説明に進む前に、描画済みの線を消しておきましょう。
上図のように線を消します。 キーボードのDを押しながらマウスの右ボタン()でドラッグして消しましょう。
では、Draw Modeを "Surface" に変更して線を引いてみましょう。
上図のようにGrease PencilパネルのDrawing SettingsのDraw Modeを "Surface" に変更します。
では、これで線を引いてみましょう。
上図のように立方体の中心から上方向に線を引いてみましょう。
上図のように線が引かれます。
どのように描かれたかを確かめるため、3D Viewウィンドウの視点を回り込ませましょう。
上図のように視点を移動します。 面に沿うように線が引かれているのが確認できます。
Draw Modeが "Surface" だと、このように面に沿うように描画されます。 なお、途中から空中に飛び出していますが、それは、それより奥に面がないためです。
もっと奥に面があれば、その面に沿うように線が描かれます。 もちろん、選択中のメッシュの面ではなく、他のメッシュの面でも構いません。
では、次の説明に進む前に描画済みの線を消しましょう。
上図のように線を消します。
続いては、Grease PencilパネルのDrawing SettingsのOnly Endpointsについて説明します。 "Only Endpoints" をオンにすると、線の始点と終点だけが面にスナップするようになります。
実際に線を引いてみます。
上図のようにDrawing SettingsのOnly Endpointsをオンにします。
では線を引きます。
上図のように立方体の中心から右方向に線を引いてみましょう。
上図のように線が引かれます。 どのように線が描かれたかを確かめるため、視点を回り込ませましょう。
上図のように視点を移動します。 困ったことに、始点以外も面に沿っていることがわかります。
おそらくこれは不具合です。 Blender 2.73で確認したところ、始点と終点以外は面に沿わずに描画されました。
続いて、グリースペンシルの描画がオブジェクトに結びついていることを確認しましょう。
上図のように立方体の選択を解除します。 すると、グリースペンシルで描画した線が消えます。
このように、オブジェクトを選択して描いた線は、オブジェクトの選択が解除されると見えなくなります。
では、再び、立方体を選択してみましょう。
上図のように立方体を選択します。 見ての通り、グリースペンシルの線が表示されます。
次に、オブジェクトを選択せずにグリースペンシルで線を引いてみましょう。 つまり、シーンに結びつけて線を引きます。
では、立方体の選択を解除します。
上図のように立方体の選択を解除します。
では、この状態で線を引きます。
上図のように線を引きます。
さらに、色を変えましょう。 立方体に結びつけて引いた線と区別しやすいように赤色にしましょう。
上図のようにレイヤのカラーフィールドに赤色を設定します。 見ての通り、すでに引き終えている線の色も変わりました。
色の情報は『線ごと』ではなく『レイヤ単位』で保持されるため、このような現象になります。
では、再度、立方体を選択してみましょう。
上図のように立方体を選択します。 表示された線の色は黒色です。
シーンに結びつけられているレイヤと、立方体に結びつけられているレイヤは別です。 そのため、色は黒色のままというわけです。
ではここで、新たなレイヤを追加しましょう。 立方体に結びつけられた2つ目のレイヤを作成します。
上図のように立方体を選択した状態で、Grease Pencilパネルの[New Layer]ボタンを押します。
上図のように新たにレイヤが追加されます。
注目すべきは、レイヤの操作部の左上にある丸型のラジオボタンです。 このラジオボタンが選択されているのが、現在アクティブなレイヤです。
続いて、追加したレイヤの描画色を変えます。 今度は緑色にしましょう。
上図のように追加されたレイヤのカラーフィールドに緑色を設定します。
では、このレイヤに線を引きましょう。
上図のように線を引きます。
次に、レイヤの表示・非表示について説明します。
上図のようにレイヤの操作部に目のアイコンがあります。 このアイコンで、そのレイヤの表示・非表示を切り替えることができます。
では、試しに目のアイコンをクリックしてみましょう。
上図のようにレイヤが非表示になり、緑色の線が見えなくなりました。 また、目のアイコンも変化し、閉じた目のアイコンに変わっています。
では、閉じた目のアイコンを押して、表示状態に戻しましょう。
上図のように表示状態に戻します。
ここからはフレームとの関連付けの説明に入りますので、まずは不要な線を消します。 現在のレイヤの緑色の線を消してください。
上図のように線を消します。
では、新たな線を引きます。 現在の緑色のレイヤに、"フレーム1" と読める線を引きましょう。
上図のように "フレーム1" と読める線を引きます。 次に、対象フレームを50にします。
上図のように対象フレームを50にします。
対象フレームを50にしたことで、グリースペンシルの線は何か変化したでしょうか。
上図のようにグリースペンシルで描いた線には何の変化もありません。
なぜなら、このレイヤには1フレーム目にしか線を引いていないからです。 そのため、2フレーム目以降も、1フレーム目と同じ線が見えているのです。
続いて、50フレーム目にも線を引きます。 "フレーム50" と読める線を引きましょう。
上図のように "フレーム50" と読める線を引きます。
なお、線を描きこんだ瞬間に、"フレーム1" の線は消えたはずです。 消えたのは、50フレーム目に線が描かれたためです。
ではここで、対象フレームを25にしましょう。
上図のように対象フレームを25にします。
対象フレームを25にした結果、どうなるでしょうか。
上図のように1フレーム目と同じ線が表示されます。
最後に、オニオンスキンについて説明します。 Grease Pencilパネルのレイヤの操作部にあるOnion Skinningチェックボックスをオンにすると、オニオンスキンが有効になります。
試しに、Onion Skinningチェックボックスをオンにしてみましょう。
上図のように他のフレームの線も薄っすらと見えるようになります。
なお、Onion Skinningチェックボックスの下のFramesで、表示対象に含める前後のフレーム範囲を指定できます。 初期値の 0(ゼロ) のままだと、他の全てのフレームの線が表示されます。
グリースペンシルで3D ViewウィンドウまたはUV/Image Editorウィンドウに落書きすることができます。 メモ代わりやチームメンバーとの情報共有、指示などに使います。
グリースペンシルで描いた線は、レンダリング結果には含まれません。 レンダリング結果に表したければ、メッシュに変換する必要があります。
なお、グリースペンシルの描画はシーンまたはオブジェクトと関連付けられます。 オブジェクトを選択して線を引けば、そのオブジェクトに関連付けられます。 どのオブジェクトも選択せずに線を引くと、現在のシーンに関連付けられます。
また、グリースペンシルの描画はレイヤを分けることができ、さらに、フレームごとに描画が管理されます。