前の記事の『環境光で暗すぎる部分を明るくする(その2)』からの続きです。 この記事では、環境照明(Environment Lighting)の機能を使ってみます。
環境照明は、アンビエントオクルージョンと同じく環境光を表現するための計算手法です。 レンダリング結果も、アンビエントオクルージョンとよく似ています。
アンビエントオクルージョンとの違いは、
です。 つまり、アンビエントオクルージョンのBlend Modeの "Multiply" のように暗くすることはできないため、明るくするために利用します。
ここでも、前の記事と同じように実験用シーンを元に解説します。 画面上部のプルダウンメニューの"File" -> "Open"を実行して実験用シーンのファイルを開きます。
まずは、レイトレーシングを有効にする必要があります。
上図のようにPropertiesウィンドウのレンダーパネル切替ボタンでレンダ関連のパネル群に切り替え、ShadingパネルにあるRay Tracingチェックボックスをオンにします。
標準レンダリングエンジンのBlender Renderはスキャンライン方式でレンダリングを行いますが、レイトレーシングも併用することができます。 レイトレーシングを併用することで、
の機能が使えるようになります。
続いて、仮想世界の色を設定します。
上図のようにPropertiesウィンドウのワールドパネル切替ボタン()でワールド関連のパネル群に切り替え、仮想世界の色を設定します。 WorldパネルのHorizon Colorに青色、Zenith Colorに緑色、Ambient Colorに赤色を設定し、さらにBlend Skyチェックボックスをオンにします。
なお、アンビエントオクルージョンと違って、Horizon Color と Zenith Colorで設定した色が反映されます。 ただし、環境光の色(Environment Color)に "Sky Color"(空の色) を選択している場合に限ります。 Environment Colorが "White"(白色) の場合は、Horizon Color と Zenith Colorの影響はありません。
また、アンビエントオクルージョンと同じく、Ambient Colorの影響は受けません。
続いて、環境照明を有効にします。
上図のようにEnvironment Lightingパネルの同名のチェックボックスをオンにし、Environment Colorの選択リストに "White" を選択します。
では、レンダリングしてみましょう。 キーボードのF12キーを押してください。
上図のようにアンビエントオクルージョンでBlend Modeを "Add" にした場合のレンダリング結果と同じに見えます。
なお、立方体やスザンヌや平面が赤色に染まっている理由もアンビエントオクルージョンと同じです。 環境照明の計算結果をもとにシェーダで陰影計算が行われ、その結果にAmbient Colorの色が加算されているというわけです。
続いて、Environment Colorに "Sky Color"(空の色) を設定してレンダリングしてみましょう。
上図のようにEnvironment LightingパネルのEnvironment Colorの選択リストに "Sky Color" を選択します。
では、レンダリングしてみましょう。 キーボードのF12キーを押してください。
上図のようにHorizon ColorとZenith Colorの影響を受けていることがわかります。
なお、平面が黄色くなっているのは、Zenith Colorの緑色とAmbient Colorの赤色が足されているからです。
現在の設定では、Ambient Colorが強すぎて "Sky Color" の効果がよくわかりません。 Ambient Colorを暗くしてレンダリングし直してみましょう。
では、Ambient Colorを暗くしましょう。
上図のようにWorldパネルのAmbient Colorに黒色を設定します。
では、レンダリングしてみます。 キーボードのF12キーを押します。
上図のように下向きの面や横向きの面はHorizon Colorの影響を、上向きの面はZenith Colorの影響を受けていることがわかります。
では、Ambient Colorを赤色に戻しておきましょう。
上図のようにWorldパネルのAmbient Colorに赤色を設定します。
続いては、マテリアルごとに影響度を調整してみましょう。 立方体や平面への影響度は今まで通りとし、スザンヌの影響度を 20% にまで落としてみましょう。
まずは、対象のメッシュオブジェクトを選択します。
上図のようにスザンヌを選択します。
続いて、マテリアルの環境照明からの影響度を設定します。
上図のようにPropertiesウィンドウのマテリアルパネル切替ボタン()を押します。
上図のようにShadingパネルのAmbientを0.2に設定します。
では、レンダリングしてみましょう。 キーボードのF12キーを押してください。
上図のようにHorizon ColorとZenith Colorのスザンヌへの影響が小さくなっていることがわかります。
この記事で紹介した『環境照明』と、前の記事で紹介した『アンビエントオクルージョン』は併用することができます。
実は、Blender 2.4系までは環境照明の機能はありませんでした。 一方、アンビエントオクルージョンの機能はBlender 2.4系にも搭載されており、環境光の色に "Sky Color" や "Sky Teture" を選ぶことができていました。
つまり、『環境照明』と『アンビエントオクルージョン』は、Blender 2.4系までは『アンビエントオクルージョン』という1つの機能だったのです。
それが、Blender 2.5系で分離され、『環境照明』と『アンビエントオクルージョン』に分かれました。
別の機能に分かれたことで併用できるようになりました。 というよりも、併用できるように分けられたのかもしれません。
なお、併用する場合は、アンビエントオクルージョンのBlend Modeは "Multiply" に、環境照明のFactor は小さい数値 ( 例 : 0.1 ) にするのがいいでしょう。 環境照明で暗い部分を明るくし、アンビエントオクルージョンで隅や凹んだ場所を暗くします。
環境照明は、アンビエントオクルージョンと同じく環境光を表現するための計算手法です。 ただし、アンビエントオクルージョンのBlend Modeの "Multiply" のように暗くすることはできません。
なお、環境光の色は、白色だけではなく背景色(空の色)を指定することもできます。
また、マテリアルごとに環境照明の影響度を設定することができます。