前の記事では、3DCGの世界で一般的に利用されているレンダリング方式を説明しました。 代表的なレンダリング方式である、
の5種類について簡単に解説しました。
3DCGに関する話題を扱っているニュースや記事などでは、上記の5種類のレンダリング方式と一緒に、
も合わせて紹介されていることがあります。
しかし、本ウェブサイトでは、ラジオシティとフォトンマッピングについては、レンダリング方式としては紹介しませんでした。 理由は、ラジオシティやフォトンマッピングというのは、グローバルイルミネーションを考慮した陰影計算の計算方法でしかないためです。
ラジオシティやフォトンマッピングは陰影計算の前処理であり、レイトレーシングやパストレーシングと組み合わされて使用されるものです。
そのため、レンダリング方式としては紹介しませんでしたが、グローバルイルミネーションの考えに基づいた陰影計算の手法としてここで簡単に解説しておきたいと思います。
ラジオシティ(Radiosity)は、間接光を表現するための計算手法です。 視点からではなく、光源からの光の行方を追跡します。 ただし、光としてではなく熱力学的に処理されます。
ラジオシティは、レンダリング方式ではなく陰影計算の前処理です。 ラジオシティによって計算された仮想世界の各地点の熱量が、後工程の陰影計算において明るさとして利用されます。
つまり、陰影計算の前処理として、『ここは暗い』・『ここはすごく明るい』・『ここはまずまずの明るさ』という情報を計算しておく手法です。
Blenderにおいては、Blender 2.28で搭載され、Blender 2.4系までは活躍しましたが、Blender 2.5系からは姿を消しました。 もちろん、現行のBlender 2.7系にもラジオシティは搭載されていません。
ラジオシティは、屋外などの開けた場所を表現するのは苦手ですが、室内の表現力の凄さは印象に残っています。
ただ、Blender 2.5系からは間接照明(Indirect Lighting)の機能が搭載されました。 また、Blender 2.61から搭載された物理ベースのレンダリングエンジンのCycles Renderもあります。 なのでラジオシティが使えなくなっても筆者は困ってはいません。
フォトンマッピングは、ラジオシティと同じく間接光を表現するための計算手法です。 光源からフォトン(光子)を放出し、その行方を追跡します。
フォトンマッピングも、レンダリング方式ではなく陰影計算の前処理です。 フォトンマッピングによって計算された仮想世界の各地点の明るさが、後工程の陰影計算において利用されます。
光の反射や透過・屈折・吸収が考慮されているため、光の反射や屈折により発生するコースティクス(集光模様)も表現できます。
Blenderにはフォトンマッピングの機能は搭載されていません。 Blenderでフォトンマッピングを使いたければ、フォトンマッピングに対応している外部レンダリングエンジンを呼び出す必要があります。
陰影計算の前処理として、ラジオシティやフォトンマッピングと呼ばれる技法もあります。 どちらの技法も、仮想世界での各地点の明るさをあらじめ計算しておき、その後の陰影計算に利用するという考え方です。
ラジオシティやフォトンマッピングを利用することで、写実的な間接光を表現することができます。