一応、てんとう虫...らしきものをモデリングすることができました。 しかし、モデリング作業はまだ終わりではありません。 てんとう虫を構成する面の数が少ないため、てんとう虫はカクカクしすぎています。
一般的に、モデリングソフトウェアには少ない面数でもなめらかに物体を表現する機能が用意されています。 Blenderにはサブディビジョンサーフェスとスムージングの機能が搭載されていますのでその機能を使って、カワイイ『てんとう虫』をなめらかにします。
完成後のイメージをつかみたいので、視点をカメラ位置に移動して眺めてみます。 キーボードのテンキーの0(ゼロ)を押し、視点をカメラ位置に移動します。
上図のようにカメラ視点での『てんとう虫』が表示されます。
出来栄えはどうでしょうか...予想通りカクカクしすぎです。 別に、写実的なてんとう虫を目指しているわけではありません。 しかし、これではあんまりです。 せめてもう少しなめらかにしてあげます。
てんとう虫がカクカクしている理由は面の数が少ないためです。 では、なめらかにするために面数を増やせばいいかというとそれは違います。
面数が増えると、モデリングにもレンダリングにも時間がかかってしまいます。 モデリングの基本は、いかに少ない面数で物体を表現するかという点にあります。
形状をなめらかにするための機能として、サブディビジョンサーフェスとスムージングがありますので、それを利用して面数を増やさずになめらかにします、 これらは、Blender特有の機能ではなく、ほとんどのモデリングソフトウェアに搭載されている機能です。
サブディビジョンサーフェスは、面を細分化するための機能で、ミラーのモディファイアと同じくモディファイアです。 すでに説明したように、モディファイアはメッシュが持つ形状の情報を一切変更せずに、見た目にだけ反映される装飾を行います。
上図のようにサブディビジョンサーフェスが有効になっていると、レンダリング時に面が再分割されます。 それにより、陰影がなめらかになります。
スムージングは、光の反射角度を緩やかに変化させることにより陰影をなめらかにする機能です。
上図のようにスムージングが有効になっていると、光の反射角度が、面の中央部と端で変化するようになります。 それにより、陰影がなめらかになり、形状が擬似的になめらかになったかのように見えます。
では、実際にサブディビジョンサーフェスとスムージングの機能を使って、カワイイ『てんとう虫』をなめらかにします。
まずは、てんとう虫の体にサブディビジョンサーフェスのモディファイアを追加します。
上図のようにてんとう虫の体のみを選択し、Propertiesウィンドウのモディファイアパネル切替ボタン()を押します。
上図のようにPropertiesウィンドウにModifiersパネルが表示されます。
では、実際にサブディビジョンサーフェスのモディファイアを追加しましょう。 [Add Modifier]ボタン()を押します。
上図のようにモディファイアの一覧が表示されますので、一覧から "Generate" -> "Subdivision Surface" を選択します。
上図のようにサブディビジョンサーフェスのモディファイアが追加されるとメッシュが細分化されます。
また、ミラーのモディファイアと同じように、PropertiesウィンドウのModifiersパネルに、追加したサブディビジョンサーフェスのモディファイアの操作部が追加されます。
上図のようにサブディビジョンサーフェスのモディファイアの操作部が追加されていますので、View()の値を2に、Render()の値を4に変更します。
次に、てんとう虫の脚にも、サブディビジョンサーフェスのモディファイアを追加します。
上図のようにてんとう虫の脚を選択し、Modifiersパネルにある[Add Modifier]ボタン()を押し、一覧からSubdivision Surfaceを選択します。
追加したサブディビジョンサーフェスのモディファイアの操作部が追加されますので、View()の値を2に、Render()の値を4に変更します。
では、結果を確認するためキーボードのAを押して選択を全解除します。
上図のようにサブディビジョンサーフェスのモディファイアの作用によってメッシュが細分化されています。
モディファイアの操作部には、様々な情報やボタンが表示されていますが、ここではミラーのモディファイアにはなかった項目について説明します。
まず、細分化方法選択ボタン()は面の細分化の方式です。 細分化の方式には、"Catmull-Clark"と"Simple"がありますが、形状をなめらかにするには初期値の"Catmull-Clark"を使用します。 "Simple"は単に面を細分化するだけで面の角度は変化しないため形状はなめらかになりません(後述のスムージングと併用すれば"Simple"でもなめらかにはなります)。
続いて、View()とRender()ですが、これらは細分化の程度を設定するもので、値が大きいほど面が細かくなります。 Levelが3D Viewウィンドウでの表示、Renderがレンダリング時の表示に適用されます。 Levelの値は2に、Renderの値は4に設定すればよいでしょう。
次の、Optimal Displayチェックボックス()ですが、オンにするとワイヤフレーム表示の場合に細分化表示が行われなくなります。
最後に、Subdivide UVsチェックボックス()ですが、オンにするとメッシュに適用するUVマップも細分化されます。 UVマップは、3次元のメッシュに2次元の画像をテクスチャとして貼り付けるための位置変換情報です。 このボタンをオフにする理由はありません。
続いて、てんとう虫の体にスムージングの設定を行います。
上図のようにてんとう虫の体を選択し、3D Viewウィンドウ上で、キーボードのTを押します。
上図のようにツールシェルフが表示されますので、ToolsタブのEditパネルにある[Smooth]ボタン()を押します。
次に、てんとう虫の脚にスムージングの設定を行います。
上図のようにてんとう虫の脚を選択し、ツールシェルフの[Smooth]ボタン()を押します。
ツールシェルフはしばらく使いませんので、キーボードのTを押して折りたたんでおきます。
では、結果を確認するためキーボードのAを押して選択を全解除します。
上図のようにスムージングが設定されるとメッシュがなめらかになります。 スムージング前後で面の数は変化していないのですが、陰影が緩やかに変化するようになったためなめらかに見えます。
サブディビジョンサーフェスとスムージングによって、てんとう虫がなめらかになりました。 しかし、悲しいことに、てんとう虫に見えなくなりました。
見た目がおかしくなったのは、上図の線を引いた部分に原因があります。
まず、体の底面の周囲がなめらかになったことによって体が半球ではなくなりました(赤線を引いた部分)。
次に、体と頭部の境界がなめらかになったことによって境目がわからなくなってしまいました(緑線を引いた部分)。
さらに、触角の付け根がなめらかになったことによって触角が頭部と一体に見えるようになってしまいました(青線を引いた部分)。
かといって、サブディビジョンサーフェスの機能を使用しなければ、てんとう虫はカクカクしたままです。 ですので、サブディビジョンサーフェスの機能は使いつつ、鋭さを残す部分は残すように修正を加えます。
サブディビジョンサーフェスは、小さな面では変化が鋭く、大きな面では変化が緩やかになるという仕様になっています。 ですので、細分化して小さな面を作ることで鋭さを表現することができます。
では、オブジェクトモードからエディットモードへ切り替えます。 てんとう虫の体を選択し、キーボードのTabキーを押します(または3D Viewウィンドウのモード選択リスト()のEdit Mode(エディットモード)を選択します)。
キーボードのテンキーの3を押し、視点を側面図(右側)に移動します。
上図のようにエディットモードになっていることを確認し、キーボードのCTRL+Rを押します。
上図のようにループ細分化モードに切り替わりますので、ピンク色の細分化線が体を横に通るように調整し、マウスの左ボタン()を押して細分化位置の決定に進みます(キーボードのEnterキーでも決定できます)。
細分化線がオレンジ色に変わり、キーボードのカーソルキー(↑↓←→)やマウスの移動で細分化線をスライドできる状態になります。 オレンジ色の細分化線をEdge Slideが-0.80の位置に移動し、マウスの左ボタン()を押して細分化を実行します(キーボードのEnterキーでも実行できます)。
上図のようにメッシュが細分化されます。
続いて、体と頭部の境界も細分化しますので、エディットモードのままでキーボードのCTRL+Rを押します。
上図のようにループ細分化モードに切り替わりますので、ピンク色の細分化線が頭部を縦に通るように調整し、マウスの左ボタン()を押して細分化位置の決定に進みます(キーボードのEnterキーでも決定できます)。
細分化線がオレンジ色に変わり、キーボードのカーソルキー(↑↓←→)やマウスの移動で細分化線をスライドできる状態になります。 オレンジ色の細分化線をEdge Slideが0.80の位置に移動し、マウスの左ボタン()を押して細分化を実行します(キーボードのEnterキーでも実行できます)。
上図のようにメッシュが細分化されます。
続いて、触角の付け根も細分化します。 現在の表示倍率ではメッシュの表示が小さすぎて作業しにくいので、キーボードのテンキーの+(プラス)を4回押してズームインします。
続けて、キーボードのCTRL+テンキーの4を4回、CTRL+テンキーの8を4回押してメッシュが画面中央に位置するように視点を移動します。
エディットモードのままでキーボードのCTRL+Rを押します。
上図のようにループ細分化モードに切り替わりますので、ピンク色の細分化線が触角を横に通るように調整し、マウスの左ボタン()を押して細分化位置の決定に進みます(キーボードのEnterキーでも決定できます)。
細分化線がオレンジ色に変わり、キーボードのカーソルキー(↑↓←→)やマウスの移動で細分化線をスライドできる状態になります。 オレンジ色の細分化線をEdge Slideが0.90の位置に移動し、マウスの左ボタン()を押して細分化を実行します(キーボードのEnterキーでも実行できます)。
上図のようにメッシュが細分化されます。
では、結果を確認するためエディットモードからオブジェクトモードへ切り替えます。 キーボードのTabキーを押します(または3D Viewウィンドウのモード選択リスト()のObject Mode(オブジェクトモード)を選択します)。
キーボードのAを押して選択を全解除します。
完成後のイメージをつかむため、キーボードのテンキーの0(ゼロ)を押し、視点をカメラ位置に移動します。
上図のように体の底面の周囲が鋭くなったことで半球に近くなりました。 また、体と頭部の境界と触角の付け根の境界も境目がクッキリとなりました。
サブディビジョンサーフェスとスムージングで形状をなめらかにすることができます。
サブディビジョンサーフェスは、面を細分化するためのモディファイアです。 サブディビジョンサーフェスのモディファイアを使用すれば、モデリング時には少ない面数で編集することができ、表示時には面が細分化されます。 なお、サブディビジョンサーフェスは、小さな面では変化が鋭く、大きな面では変化が緩やかになるという仕様になっています。
スムージングは、光の反射角度を緩やかに変化させることにより陰影をなめらかにする機能です。 スムージングは、モディファイアと同じく形状には一切変更を加えることはありません。