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レンダリングエンジンについて

  

Blenderのレンダリングエンジンについて

この章では、ここまで3DCGのレンダリングに関する一般的な内容について説明してきました。 ここからはBlenderに直接関係する内容に踏み込んでいきます

この記事では、レンダリングエンジンについて解説します。 なお、実際にBlenderを使ってレンダリングを試す操作はここでは行いません。 実際にレンダリングを行っての試行錯誤はもう少し先の記事で紹介します。

  
レンダリングエンジンは『レンダラ』とも呼ばれます。

内蔵のレンダリングエンジンはBlender RenderとCycles Render

Blenderには2つのレンダリングエンジンが内蔵されています。

1つが初期状態で使用されるレンダリングエンジンのBlender Renderで、Blenderでの標準的なレンダリングエンジンです。

もう1つが、Blender 2.61で搭載されたCycles Renderという名称の新しいレンダリングエンジンです。 Cycles Renderは最近の主流である物理ベースのレンダリングエンジンです

それぞれのレンダリングエンジンには次のような特徴があります。

レンダリングエンジン レンダリング方式と特徴
Blender Render
(標準ではこちらが利用される)
・スキャンライン方式
・レイトレーシングも併用可
・併用すると以下が表現できる
  アンビエントオクルージョンによる擬似環境光
  環境照明による擬似環境光
  反射による映り込み
  半透明による透過
  他の物体による影
Cycles Render ・パストレーシング
  (分散パストレーシングも可能)
・より写実的な表現が可能
  
Cycles Renderのリリースノートには、『Cycles Renderはレイトレーシングベースのレンダリングエンジンである』というようなことが記載されています。 これは、分散レイトレーシングやパストレーシング・双方向パストレーシングは、古典的なレイトレーシングから発展したものであり、大きな分類ではレイトレーシングの一種だという理由による表現です。

レンダリングエンジンの切り替え方法

レンダリングエンジンは、初期状態でBlender Renderが選択されていますが、Infoウィンドウのレンダリングエンジン選択リストから、いつでも自由に切り替えることができます。

1. レンダリングエンジンの切り替え
1. レンダリングエンジンの切り替え

なお、レンダリングエンジンを切り替えると設定項目が変化するので注意してください。 レンダ関連のパネル群はもちろん、ワールドやマテリアル関連のパネル群の設定項目も変化します。

2. レンダリングエンジンごとに設定項目が変化する
2. レンダリングエンジンごとに設定項目が変化する

上図のように設定項目が変化します。 なお、上図はマテリアル関連のパネル群です。

レンダリングエンジンは、気ままに変えるようなものでも、風まかせで変えるようなものでもありません。 新規3DCGの制作に着手した時点で、どのレンダリングエンジンを使用するか決めておき、そのレンダリングエンジンに合わせて設定を行います

普段は負荷の少ないBlender Renderを使い、最終的な出力にはCycles Renderを使うというような使い分けをするものではありません。

内蔵レンダリングエンジンの使い分け

イラストやセルアニメーション風にレンダリングしたければBlender Renderを使うのが近道です。

Blender Render
Blender Render

写実的にレンダリングするならCycles Renderを使えばいいでしょう。

Cycles Render
Cycles Render

外部レンダリングエンジンも呼び出せる

Blenderは、モデリングだけではなく、アニメーションやレンダリング、さらにはゲームエンジンまで搭載している総合的な3DCG開発ソフトウェアです。

Blenderだけでも色々なことが実現できるのですが、レンダリング処理の部分を外部のレンダリング専用ソフトウェアにまかせることで、さらに表現の幅を広げることができます

Blenderから外部レンダリングエンジンを呼び出すためのプラグインが公開されており、プラグインを導入することで外部レンダリングエンジンを呼び出せるようになります

筆者の知っているレンダリングエンジンだけでも、

  1. YafaRay(以前は YafRay という名称でした)
  2. LuxRender
  3. Indigo Renderer
  4. Mitsuba
  5. Kerkythea
  6. Sunflow
  7. POV-Ray

などがあります。

中でもBlenderから利用される例が多いのが、YafaRay、LuxRender、Indigo Rendererでしょうか。 筆者も実際に使用した経験があるのは、この3つだけです。

当然ですが、レンダリングエンジンを切り替えると設定項目が変化します。 なお、LuxRenderは、Blenderの標準レンダリングエンジンであるBlender Renderの設定を引き継ぎやすいです。

Cycles Renderの登場で外部レンダリングエンジンの出番は減っている

Blender 2.61でCycles Renderが搭載されてからは、外部レンダリングエンジンが必要になる場面は減っているように感じます。

Blender 2.60までは、標準レンダリングエンジンのBlender Renderでは表現できないことも多くありました。 例えば、光の反射や屈折により発生するコースティクス(集光模様)などです。 コースティクスが表現できる外部レンダリングエンジンが正直うらやましかったです。

1. コースティクス(集光模様)
1. コースティクス(集光模様)

上図のように外部レンダリングエンジンでレンダリングすることでコースティクス(集光模様)を表現していました。 なお、上図はかなり以前にレンダリングしたもので、使用した外部レンダリングエンジンが何だったのか覚えていません。 LuxRenderかYafRayだと思うのですが。

筆者はまだ試していませんが、Cycles Renderではコースティクスが表現できるようです。 ただ、マニュアルによるとコースティクスを表現するのには向いていないとか。

  
but is not as suitable for caustics and some other complex lighting situations.
 
- 引用元 -
https://www.blender.org/manual/render/cycles/settings/integrator.html

また、Cycles Renderでコースティクスを発生させるには、かなり多くのサンプリングが必要なようです。 つまり、光線を飛ばす回数を多くしないとコースティクス(集光模様)は出ないらしいです。

  
While in principle path tracing supports rendering of caustics with a sufficient number of samples, in practice it may be inefficient to the point that there is just too much noise.
 
- 引用元 -
https://www.blender.org/manual/render/cycles/settings/integrator.html
  

標準レンダリングエンジンのBlender Renderで写実的に表現するのは職人技

Cycles Renderが搭載されるよりも前の話です。 時々ですが、公開されているBlenderによるレンダリング画像の中に、外部レンダリングエンジンにも頼っていないのに、写実的な表現がされている作品を見かけることがありました。

『標準レンダリングエンジンで、どうやってそこまで綺麗な画像を表現できるんだろうか』と疑問に思っていたのですが、どうやら、ライティングやテクスチャに秘密があったようです。

たくさんの光源を配置することで擬似的に環境光を表現し、さらに、暗くなる部分はテクスチャ上でも暗く塗っていたとか

いわゆる、職人技ですね。 光源が増えるのでレンダリングにかなりの時間がかかっていたようです。

  

まとめ

Blenderの内蔵レンダリングエンジンには、Blender RenderとCycles Renderがあります。 セルアニメーション風のレンダリングやイラストの素材をレンダリングするならBlender Renderを、写実的にレンダリングするならCycles Renderを使いましょう。

また、外部のレンダリングエンジンを呼び出すこともできます。 プラグインを導入することで、外部の様々なレンダリングエンジンに対応できます。

レンダリングエンジンを切り替えると設定項目が変化します。 あらかじめ、どのレンダリングエンジンを使うのか決めて作業を進めるのがいいでしょう。

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